市民参加の映画製作だって、佐藤泰志の『海炭市叙景』を。 [その他]

 佐藤泰志という作家をご存知だろうか。決して派手さはなかったが、本物の作品を書いた作家。そして1990年、41歳で自ら命を絶ってしまった作家。この作家とわが夫婦は不思議な縁がある。私の妻が函館で高校生だった時、人づてながら直接につながりがあった。そして、東京に行く彼から大江健三郎の本を貰ったという。私も大学時代に短歌を書いており、発行していた雑誌についての論評が掲載された「北方文芸」81年2月号に佐藤泰志の「撃つ夏」が掲載されていた。

雑誌「北方文芸」.jpg
雑誌「北方文芸」1981年2月号の表紙

佐藤は何度も芥川賞の候補になったが受賞はできなかった。一読すると、暗い小説なのだが、なにより一度味わうと忘れられないほど不思議な魅力がある。そんな彼の最後の小説が『海炭市叙景』である。妻はエッセーの中で『海炭市叙景』を何とか映画化できないものだうか、と書いた。その思いが現実になりそうなのだ。製作費の半分を市民のカンパによってまかなうのだという。こんなことは日本映画史上初めてではないだろうか。映画製作協力金として一口10,000円からのカンパを呼びかけている。1口の場合、入場券1枚、クレジットタイトルへの名前の記載、エキストラ出演登録権の3点の特典がつく。3口だと、台本ももらえる。5口だと撮影見学会への招待つきである。ただし、これは函館市民に向けてのちらしなので、見学会に入れる権利はもらえても、函館までの旅費は自己負担しないといけないだろうけど。でも函館はいい街ですよ。

ちらし「海炭市叙景」.jpg
映画「海炭市叙景」の映画製作協力をよびかけるちらし
http://www.cinemairis.com/kaitanshi/  (ホームページ)

監督は帯広生まれで大阪芸術大学卒業の熊切和嘉だ。これは期待できる。市民の力で映画を製作するというこの画期的な試みに参加してみませんか、皆さん。

佐藤泰志「移動動物園」.jpg
佐藤泰志の『移動動物園』表紙(1991年2月新潮社)

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