竹中英太郎と『新青年』との1928年(4) [竹中英太郎]

もう一つ、この時に横溝とのコンビで編集にいた渡辺温のことが気になっている。渡辺温は渡辺裕名義でプラトン社の雑誌『女性』の映画筋書懸賞に応募した「影」の受賞が作家のデビューにつながった。英太郎は熊本時代に映画ファン雑誌に文章を寄せているように映画好きであるが、渡辺温も映画好き。年齢も近い二人は意気投合したのではないかと想像する。英太郎は8月号でも甲賀三郎の「ニウルンベルク名画」の挿絵を描いている。そして7月20日発売の夏季増刊号に江戸川乱歩の「陰獣」が掲載される。大変な反響であった。小説もさることながら、英太郎の挿絵も評判であった。これで、人気挿絵画家の地位を確立できたのだった。長男の労は生後4カ月。熊本から呼んだ母親や親族も同居することができた。生活的にはやっと手にいれた「安定」だっただろう。だが、ここまで必死に働いたため、全日本無産者藝術聯盟に参加した壷井繁治や三好十郎らと共に働くことはできなかったのだろう。

竹中英太郎「新青年」昭和3年8月号甲賀三郎「ニウルンゲルクの名画」.jpg
竹中英太郎挿絵『新青年』昭和3年8月号甲賀三郎「ニウルンベルクの名画」
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