ときたまメールアート(2) [メールアート]

  初めにおためしというかテストのために、この年の十一月二○日から約一カ月の間に、いくつかのハガキを世界各地に送ってみた。封筒に二枚のハガキをいれ、一枚は手元にキープし、一枚にコラボして土岐さんあてに返送するようお願いし、十七カ国、四十人の方々に送ったのだった。このアクションによって土岐さんのメールボックスはその時からギャラリーに変った。土岐さんから連絡があり、ぞくぞく届くハガキの美術的なレベルの高さに驚いたということだった。このテストによって、ときたまハガキによるコラボレーション作品制作の感覚を得ることができたので、五月の展覧会に向けて、企画を進めることにした。まずは展示のためにどのくらいの数のハガキが必要かをきいたところ、少なくとも二○○枚は欲しいと返答がきた。メールアートは前述した通り、返送するもしないもそれぞれのメールアーティストの勝手なので、当然ながら想定よりもかなり多くの相手に送っておかないと数が確保できない。そこで私の千件を超える名前、住所リストから現在もアクティブな三六九人のメールアーティストを選び、これをときたまメールアート用のリストにした。次にどのような形でコラボレーションを行うかである。私自身、同じイメージをすべての方に送る方法とすべて別々のイメージを送る場合とがあった。バリエーションは、すべて違うイメージを送った方が確保できるかもしれないが、同じイメージでコラボレーションを行う場合にはそれぞれの作家による差異が際立つ。今回は明らかに同じイメージにして対応の仕方の違いや逆に思いがけない国の方たちが似ている方法をとってしまう面白さを楽しんでもらう方が良いだろうと感じていた。そしてコラボレーションの仕方の違い、その変化を一覧で見てもらうために、一つの言葉を共通に送ることにした。そこで、土岐さんから七○○種類以上のハガキを提示いただき、それを実際に見て、読んで、どれがいいか検討した。その選定基準は以下である。 (一)漢字、かなの双方が使われており、バランスがいいもの (二)コラボするためのスペースが十分にあること (三)海外の方にも翻訳英文で意味が伝わること (四)デザインで何かのイマジネーションが生じる方が望ましい こうした基準から「背中の向こうに見えるもの」という言葉を選んだ。印字された様はまるで人が立っている姿にみえる。「背中」「向」「見」という四つの漢字と「のこうにえるもの」という八つのひらがな。このバランスも素晴らしいと思った。ハガキの表には意味を単語単位で英文表記した。「背中=the back」「向こう=beyond」「見え=see」「もの=the thing」とだけ解説した。この単語によって浮かぶイメージを言葉と同じ平面に描いてもらうことにした。このハガキを四○○枚以上制作し、英語と日本語による依頼文をつけて世界各地に送付したのは二○一○年一月末日のことだった。この作業は実は結構大変で、送付リストをシールにし、封筒に貼り、ときたまハガキと依頼文を封入する。それらが正しい形になっているのかを確認し、封をして切手を貼ってゆく。郵便局に持ち込んでいただいたが、国数や部数の多さに郵便局員も驚かれたのではないかと思う。
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