「未来」に向けてのメールアート(1) [メールアート]

 2011年の秋、美術家の小川敦生さんから一通のメールが届いた。「本ということ」というタイトルの展覧会の企画が藤沢のギャラリーで開催する予定で進んでおり、制作期間はあまりないけれど参加しませんか、とのことであった。会場の様子もわからないので、まずは見せていただこうということにした。そのときに伺ったのがアトリエ・キリギリスとの初対面であった。藤沢駅から徒歩で5分くらい。庭のついた二階建ての建物がそこにはあった。壁にはツタがはっていた。その日は、工房リビングストンさんの展覧会が開催されており、時間の経過を身にまとった壁面や調度と陶器とのバランスに息を呑んだのであった。奥には「レントゲン室」の表示がされている白い部屋もある。庭側の自然光が差し込む部屋は柔らかい光線に包まれていた。なんという居心地の良い空間なのかと思った。この時、小川さんにオーナーの松田未希さんとブックショップ・カスパールの青木真緒さんを紹介された。キリギリスのたたずまいをみて、ぜひ参加したいと思った。ただし、新作を準備する時間はあまりなかった。場所のもつ「空気」にインスパイヤされて1か月くらいの制作期間をフルに使って新作のアーティストブックやブックオブジェを完成させ、旧作とあわせて納品することができた。キリギリスでは展示をすべて松田さんが行う。私の本たちは幸運にも最初に訪れた際に「気持ちの良い」部屋だと感じた自然光が差し込む柔らかい光線に包まれる部屋に展示された。この展示期間にメールアートについて松田さんと話した。松田さんはメールアートのオープンなシステムに共感し、ぜひ展覧会をやってみたいとの話をいただくことになった。2012年になり、具体的なプランを練っていった。

本ということ展示.jpg   
「本ということ」展での展示風景。中央ケース内は内田紫陽子さんの作品。

 まずは展覧会の時期、これは2012年6月ごろをめどにやろうということになった。これを前提に考えると展示の準備もあるのでゴールデンウィークあけの5月15日に締切(デッドライン)を設定せざるをえないとの判断をした。となると、実はあまり募集までの作業はぐずぐずする余裕がないと気がつき、急いでテーマを決めることにした。もちろん、何もテーマを設定しない募集の仕方もある。しかし話し合いの結果、サイズや素材、技法を自由にするかわりにテーマを設定することにした。決めたテーマは「未来」。松田さんのアイディアである。3.11を経験した我々、そして多くの子供たちにむけてメールアートという手段を通じて新たな「未来」を見せてほしいと願ったのだ。
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