無用のもの [小説]

 日頃は背広とシャツにかくれているが、私の背中には小さな翼がある。
肩甲骨につながって骨がつきだし、そこに羽毛が生えている。
翼をかくしているときの私はむしろシャイなのだが、翼をひろげた時には
全身に力が漲り、なぜだか自信満々になる。

 彼女も最初は驚いていたが、慣れれば気にならないようで、そのときに
翼をつかんだりする。

 ある時、大事なプレゼンがあって、私はその中心メンバーに任命された。
大きな会議室で重要な地位にある多くの要人たち・・・。どうしても自信を
もって語れない私はシャツに穴をあけて背広の下でわずかに翼をひろげる
ことにした。

 プレゼンは想った以上にうまく進行した。私の自信が声のトーンを魅力的
にしたようだ。最後の章に進んだ私は汗だくになっているのに気付いた。
「ちょっと失礼します」と思わず背広を脱いでしまった。
誰もが目をみひらき、絶句していた。

 緊張のあまり羽ばたくとすこしだけ宙に浮いていた。
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