「あなたへ あなたと」――YOU project(2) [メールアート]

以下は実際にホームページに掲載した告知の内容である。

3月11日に日本を襲った巨大地震。その被害の大きさに、ただただ驚き,悲しみ、祈るしかない気持ちになりました。でも何かしたい。いえ、何かしていないと落ち着かないと言った方がいいかも知れません。東京に住んでいる私たちが被災者の方たちのために、何かできることはないかと考え、「YOUプロジェクト」をはじめます。
「YOUプロジェクト」の「YOU=ゆう」は,「友」「有」「結」「郵」そして「あなた」の意味です。今度の地震で大きな被害に会ったあなた、家族を友人を知人を失われたあなた……地震に関わり悲しみを背負ったすべてのあなた。あなたへ、私たち一人ひとりからのメッセージを世界中から集めます。
「YOUプロジェクト」はメールアートのプロジェクトです。「あなたへ あなたと」と書かれたハガキに、コトバのメッセージやイラストや写真をつけ加え、事務局まで郵送してもらいます。

このメッセージに対する反応はすぐに届く。ホームページに掲載された最初のハガキは3月18日に掲載作業がされている。この日に届いたのか前日なのか、いずれにせよホームページを立ち上げた直後の反応であったことは間違いない。
          
さすがに海外からではなく、国内からだった。それでも3月23日にはドイツのSusanna Laknerさんからハガキが届いているので、ホームページにアップと同時に制作し郵送してきたものと思われる。これは改めて考えてみると驚くべきことだと思う。地震発生は11日、企画をたてたのが15日、ホームページのアップは18日。スザンナさんは直後に制作、即座に郵送いただいたに違いない。この反応こそはメールアートの真髄、とはいいながら驚くスピードであった。

半田清.jpg
最初に届いた半田清さんのハガキ

Susanna Lakner.jpg
Susanna Laknerさんのハガキ

ハガキが届き始めてから約1週間、3月26日には上野にあった「めぐり」にて第1回の展覧会を行っている。壁面に展示用のハガキポケットをつるし、すでに届いていた53通を展示、日々届くハガキを差してゆくというスタイル。「めぐり」は発起人の一人、おかどめぐみこさんの店舗である。この時点で海外からはスペイン、ドイツ、ベルギー、カナダ、フランス、マケドニア共和国と6か国から参加があった。

めぐり展示2.jpg

めぐり展示1.jpg

めぐりでの展示
nice!(5)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:アート

「あなたへ あなたと」――YOU project(1) [メールアート]

 その日は突然に来た。数日前から予感はあった。ハワイのキラウェア火山の噴火があって危険だと思った。しかし、まさか東北を震源とする巨大地震が起きようとは予測できていなかった。漠然と東京に大きな地震があるかもと思っていたのだった。その時、私は新宿のビルの一室にいて仕事をしていた。足の裏をちょっとたたくような震動のような、たとえると岩が割れるような微かな感触が伝わってきた。私は立ち上がり、皆が地震だと気付く前に「落ち着いて行動するんだよ」と叫んでいた。微かな震動は大きな縦揺れに変わり、やがて横揺れが加わった。かつて経験したことがないような揺れであり、時間も長かった。いつまでたっても終わらなかった。壁に亀裂ができて大きく口をあけた。やがて無限に続くかと思われた激しい揺れも収まった。この地震、多くの海外からの旅行客が動画に撮影、その映像をフェイスブックなどSNSを経由して世界中に配信したという特異な現象を生んだのだった。インターネットの中で配信された映像のなかの新宿高層ビル群は激しく揺れ、ビル同士がぶつかりそうになっていた。こうした映像をみた海外のメールアーティストから一斉に安否を問い合わせてきたのだった。今考えれば当たり前のことなのだが、妻の実家のある北海道・森町への電話連絡よりもアルゼンチンの友人へのフェイスブックを経由しての「私は大丈夫」のメッセージのほうが順調に届けられたのだった。その後の津波の映像も、福島第一原発の爆発の危機も海外から私のもとへSNS経由でリアルに届けられたのだった。

 3月11日は金曜日であった。土曜日、日曜日と都市全体が沈んで、うちひしがれていた。物理的にも照明を落としていたので暗く感じた。津波が襲った東北地方の海岸部は火に包まれていたり、あとかたもなく町が消えたりとあまりに大きな被害にあっていた。言葉を失う光景であった。そんな中、「ときたま」アートの土岐小百合さんからメールが届いた。「大きな被害でじっとしていられない。なにもできないのかもしれないが、何かしないとおかしくなってしまいそう。なにかできないかなあ」ということだった。このメールはおかどめぐみこさん、平戸加代さんにも送られていた。結局この4人でなにか我々の手作りの範囲でできることをやろうということになり、3月15日の夜に新宿駅西口地下の喫茶店に集った。そこくらいしか夜は営業している店がほとんどなかった。4人は暗い町、余震の続く環境に少し興奮したまま、「何かをする」を形にしてゆく議論をした。被災した地域の人たちと気持ちを共有したい、なんとか応援メッセージを届けたい、できれば世界中の人たちからのメッセージを届けたいという点で我々は合意した。それをメールアート・ネットワークを使って形にしよう。その後の展示などは別に考えようと結論した。そこまでの議論が済むとその後の行動は早かった。すぐにこのプロジェクトを「YOUプロジェクト」と命名し、ハガキに「あなたへ あなたと」と印刷したものにコラボレートしてもらうことにした。海外の方々にも参加いただくために説明文を英語へと翻訳、インターネット内にホームページを立ち上げて、そこでプロジェクトの告知を行い、あわせて届いたハガキを紹介するという展開方法を決めた。横浜バンクアートでの「ときたまメールアート」は印刷したハガキを海外のメールアーティストに郵送したが、今回はホームページにアクセスしてもらい、データから各自ハガキに印刷してもらい、コラボレートしてもらう形式とした。
nice!(4)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:アート

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。