ギャラリーとしてのメールボックス(1) メールアートギャラリー<封筒絵画とメールオブジェ> [メールアート]

1.アートの日常への侵入

 メールアートの楽しいところ、それは自宅あてにアートが直接届く所。普通アート作品を見る場合、美術館に行ったり、ギャラリーに出向いたりする。そして、あらかじめ誰かが、このように見せようと意図した展示を見ることになる。もちろん、見る側もそれを承知で見る訳で、自然によそゆきの視線をもってアートを見ることになる。一方、メールアートの場合、逆にアートが我々の生活の中に侵入してくる。実際のところ、いつ、誰が、どんなものを送ってくるのかもわからない。自宅に直接送りつけられるので、見る側の状況などお構いなし、である。雑多に送られてくる書簡や通信物にまぎれてアートが息を潜めている。その瞬間、メールボックスは美術館に、あるいはアートギャラリーになっている。その変化に気付くのは、メールボックスを開けてからである。毎日どきどきなのである。

カナダ Steven Renald.jpg
カナダのSteven Renaldからのメール

カナダ Jas Felter.jpg
カナダのJas Felterからのメール

 メールアーティストの中には、封筒にペインティングを施し、自家製の切手を本物の切手に紛れこませて貼りこみ送ってくる者がいる。この延長線上の作品として、オブジェ自体に宛先を書き、切手を貼って「剥き出し」のまま送ってくる場合もある。私は、封筒絵画をペインテッド・エンビロープ、オブジェをメールオブジェ(航空便の場合はフライングオブジェ)と呼んでいる。こうした場合、封を切って中身を見るまでもない。郵便物の表面にアートが滲み出てしまっている。そのため、発信した国の郵便システムに関わる人間から届けられる国の郵便システムに関わる人間の手を経て相手のメールボックス・ギャラリーに展示されるまでの輸送経路においても、様々な人々の目に触れることになる。つまり、国際的な郵便ネットワークの流通過程において既に展覧会は始まっていることになる。そして、私のメールボックスは私専用のアートギャラリーと化す。

がいこつ郵便.jpg
日本のYoshio Takedaからのメールオブジェ

アメリカ Mark Dyer.jpg
アメリカのMike Dyarからのメール

カナダ Elaine Rounds.jpg
カナダのElaine Roundsからのメール

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コメント 13

Krause

どの絵も味わいがあって良いですね。紙の手紙には、温かみを感じます。
by Krause (2009-08-02 04:47) 

えれあ

アートに触れる事のほぼ無い生活をしていますが、何か楽しそうです。

by えれあ (2009-08-02 19:13) 

やまがたん

ご訪問ありがとうございます☆( ゚∀゚)o彡°オウエン!オウエン!
仕事につき挨拶・応援のみとさせて貰います( TДT)ゴメンヨー
by やまがたん (2009-08-02 19:37) 

ナカムラ

Krause様:コメントありがとうございます。そうですね、手紙・オブジェ含めて現物が届くと、何だか違いますよ。実際にはお伝えできないですが、手触りや重さ、匂い(香水をふくませているケースも)などほかの要素も・・・。今後ともよろしくお願いします。
by ナカムラ (2009-08-02 19:42) 

ナカムラ

えれあ様:コメントありがとうございます。私はえれあさんの撮影される動物の写真もアートにみえますが・・・。今後ともよろしくお願いします。
by ナカムラ (2009-08-02 19:47) 

kakasisannpo

ここを訪れると画廊へ行ったって感じがして楽しいです
感謝
by kakasisannpo (2009-08-03 12:38) 

ナカムラ

kakasisanpo様:コメントありがとうございます。エールをいただいたようで、とても励みになります。今後ともよろしくお願いします。
by ナカムラ (2009-08-03 13:15) 

駅員3

いずれも素晴らしいものばかりですね!
リビングの壁に状差しをぶら下げて、さりげなくそこにメールアートを置いて楽しんだりと、これらの作品を見ているだけで色々想像して楽しまさせてもらいました(^-^)
by 駅員3 (2009-08-03 19:31) 

ナカムラ

駅員3様:コメントありがとうございました。アイルランドの詩人にしてサックス奏者のバリー・ピルチャーは届いたメールアートを自分のスタジオの壁面一面に貼っているとのことでした。状差、良いアイディアです!試してみようかな。ありがとうございます。
by ナカムラ (2009-08-03 19:45) 

リュカ

おもしろいですね。
メールボックスをあけるときのドキドキ感が伝わってきます。
by リュカ (2009-08-03 22:24) 

アヨアン・イゴカー

>流通過程において既に展覧会は始まっていることになる。
私は以前、移動美術館、移動展覧会と言うものを考えていました。パフォーマンスのようなものですが。街中を、画家の友人の作品を展示した台車を、自転車でゆっくりと引っ張ってゆく、公園に到着したら、そこで留まって、一列に作品をぶら下げたままずらりと陳列する、と言う趣向でした。そして、私達は道化師の衣裳をし、化粧をし、縦笛を吹いたり、太鼓やカスタネットやらを打ち鳴らしたりして・・・などと。結局、計画だけで終わってしまいました。
新たなる芸術の方向を探るのは、常に刺激的です。
by アヨアン・イゴカー (2009-08-03 22:32) 

ナカムラ

リュカ様:コメントありがとうございます。そうなんです、ずいぶん慣れてしまいましたが、始めたころは毎日ドキドキでした。これからも、よろしくお願いします。
by ナカムラ (2009-08-04 00:06) 

ナカムラ

アヨアン・イゴカー様:コメントありがとうございます。移動美術館、面白いです。移動美術館で思い出すのは二人。一人は評論家のヨシダヨシエ。彼は丸木夫妻の原爆の図を担いで全国を歩きました。もう一人はなすび画廊の小沢剛、移動式の画廊と呼ばれる牛乳箱。イタリアのアーティストから山手線を使った展覧会をやりたいと相談されたことがあり、交渉したのですが、実現できませんでした。ブルーノ・タルポという方でした。でも、やりたいと思ったら、あきらめないで交渉を続け、課題を一つひとつ解決してゆくことが大切だなと思うこのごろです。
by ナカムラ (2009-08-04 00:17) 

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