切手?それともアート(1) メールアートギャラリー<アーティスト・スタンプ> [メールアート]

1.切手の形をしたアートとの出会い

 切手の形をしたアートの存在を初めて知ったのは、イヴ・クライン展に展示されていた作品「ブルースタンプ」ではなかったかと思う。ヌーボーレアリスムの画家イヴ・クラインが特許をもっていた青色の顔料「インターナショナル・クライン・ブルー」で塗られた切手に、実際のパリの郵便局の消印を押してもらい、ニューヨークでの個展会場に郵送された葉書を土台にした切手作品である。しかし、当時の私は切手という形態でアート作品を作るという発想はなかったし、特別に関心をもったわけではなかった。少年時代には、仲間内に切手の収集が流行したので、人並に記念切手の収集に熱中したこともあったのだが・・・。
 初めて「切手型の美術作品」として手に入れたいと思うような興味をもったのは、フルクサスのアーティストであるロバート・ワッツが制作した切手シートであった。極めてチープな感触をもった作品であった。また別のタイプとして太田三郎さんのシード・プロジェクトに出会う。太田さんが作成した切手には彼が住む岡山県津山市の草花の種子が封入されている。種子は半透明な紙を通して美しい形態をみせる。そして、津山から太田さんは杉並区の中学生たちに葉書にこのシード切手を貼って郵送したのだ。郵便という国家が管理するシステムが、あまり動けない植物の移動を助け、種子を東京に運ぶ。中には葉書を捨てる生徒がいるかもしれない。雨にぬれた葉書から津山の植物が成長し、花を咲かせる姿を想像した。美しい光景だと思った。

2.メールアートの中の切手

 メールアートの世界に切手型のアートであるアーティスト・スタンプは確立された領域を形成している。数多くのメールアーティストがアーティスト・スタンプを表現手段としている。私がネットワークに参加した94年の最初期からアーティスト・スタンプは送られてきた。「へえ、こんな方法もあるんだ」と思ったが、その時は自ら作ろうとは思わなかった。

Ed Verney.jpg
カナダのEd Verneyの作品

 私が自分でも作ってみようかと思ったのは、複数のアーティストからアーティスト・スタンプに関するメールアート展のインビテーション(招待状)を貰ったからで、でもどうやって作成しよかと考えていた。そんな時、サンフランシスコにあったスタンプ・フランシスコというラバースタンプのショップからのカタログか、ニューヨークの書店ダッジド・エッジ・プレスかのカタログのどちらかに切手の外枠の印刷物があり、それを利用して作成しようと思った。外枠をコピーし、その中にコラージュやラバースタンプにより印字して作品化した。そのひとつひとつを縮小コピーして切手のリアルサイズにし、貼り合わせてシートにした。

中村文字.jpg
中村恵一のラバースタンプによる作品

ART POST.jpg
さまざまなアーティストの作品によるシート。カナダのアンナ・バナナの制作。
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コメント 4

SILENT

こんにちは
ドナルド・エヴァンズの切手作品は大好きです。
無地の切手のテンプレートがあれば
自作を楽しめる訳ですね。
切手の紙質も世界ではいろいろあって楽しそうですね。
by SILENT (2009-06-16 12:15) 

ナカムラ

SILENTさま:nice!とコメントありがとうございました。私もエバンスの切手好きです。あそこまで緻密なものを絵画として描くのは厳しいものがありますが。
by ナカムラ (2009-06-16 13:03) 

ものたがひ

はじめまして、ナカムラ様。切手も、とっても楽しいですね。今日は、ナカムラ様からnice!を頂き、ポストには友人からの PRINT EXCHANGE が届き、嬉しい日でした。ありがとうございました。
by ものたがひ (2009-06-16 21:51) 

ナカムラ

ものたがひ様:nice!とコメントありがとうございました。ものたがひ様のブログの内容拝見し、緻密なご検討に驚嘆しています。また、とても興味深いです。これからもどうぞ宜しくお願いします。
by ナカムラ (2009-06-17 09:03) 

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