コラージュ・コラボレーション(2) メールアートギャラリー<ポストカード・コラボレーション> [メールアート]

2.定型詩のような

 郵便には郵送できるサイズという制限がある。これが一定の制約を与える。定型郵便でのやり取りに限定すると、それはポストカードのサイズがほぼ限界となる。これが作品サイズをポストカードにした理由であった。定型詩と同様に作品サイズを限定すると、そこに盛り込める内容は制限される。その場合にどの素材を選択し、また可能ならばリサイズして相手との間合いをつめるか、コラボレーションの醍醐味である。今ふりかえってみると、大きさをポストカードのサイズにしたことに意味があったと感じている。国や育った文化によって空間や間に対する感覚は異なっている。共同制作をすると良くわかる。大きさを制限することで、それが一層際立ったと思う。これらの共同作業は日本の伝統的な詩の形式で考えると、連歌または連句に似ている。私も次第にそう思い始めていたが、最初にそれを指摘してきたのは、アイルランドの詩人、バリー・ピルチャーであり、彼とは1997年に英語による連歌集『MAIL ART RENGA POEM: INISHFREE BLUES AND TOKYO DREAM BABES』を制作した。また、1999年にはクロアチアの詩人ミミカと『FIREFLIES in the MILKYWAY』という連歌集を発行した。彼女は俳句の制作も行なっている。この2冊ともに彼らの方からRENGAを作らないかと申し入れがあったもので、最初はRENGAが連歌と一致せず、何を言っているのか理解できなかった。まさか、連歌が世界的に認知されているとは夢にも思わなかったからだが、意外なところで「伝統」に出会うものである。バリー・ピルチャーとの連歌の一部を以下に紹介する。

if i close my eyes
listen very carefully
i can hear the waves on the beach
the moon light serenade
i can travel anywhere

  our cat’s tail
  flicking the candle flame
  wonders why her tail smells
  my lover is sleeping under the cypress
  my thoughts run through the nebula

上記のものは二首ともに上句をバリーが、下句を私が制作したものであるが、その逆の場合もあり、郵便で1年くらいをかけてお互いに少しずつ制作した。連歌の場合と同様に、相手の設定した句を読んでから対になる句を構成することになり、英語が苦手な私としては苦労したが、合計80首を制作している。実際の連歌においては下句をもとに次の上句をつなげてゆくが、そこまでの作業は行なえなかった。
 コラージュ・コラボレーションも言葉によらないだけで、私の中では連歌と同様な作業であった。ポストカード・サイズという大きさの限定、半分は既に制作された世界に自分の世界をのせて、あるいは対比させて1つの新たな世界を作り上げる。これがコラボレーション・アートの魅力だ。コラボレーションにより制作されたポストカードは私の手元にあるだけでも1000枚を超えている。10センチ×15センチの小さなフレームであるが、1000枚集れば大きなキャンバスと同様の迫力がある。私も一堂に並べてみたことがかつてないが、どのような迫力をもっているのだろうか、一度機会があれば試してみたい。非常に興味がある。

※一首目を、あえて日本語に訳するならば

  目つむれば浜によせくる音聞こゆどこにもゆけそうな月のセレナーデ

とでもなるだろうか。  


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駅員3

この次のシリーズも楽しみになりました[わーい(嬉しい顔)][ひらめき]
by 駅員3 (2009-11-08 14:37) 

ナカムラ

駅員3様:コメノトありがとうございます。本日からまたコラボレーション作品を紹介し始めました。どうぞよろしくお願いします。
by ナカムラ (2009-11-09 01:11) 

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